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小冊子ことづて vol.06 陸前高田 : 出会った人たち

味と人情の鶴亀鮨 阿部和明さん

「味噌ラーメンにする?それとも塩?」
鶴亀寿司の店主阿部さんは、びっくりした顔をした私たちをみて
「冗談だって。ラーメンなんかないよ」と満足そうに笑っています。
小上がりに案内され席に着くと「今日は来てくれてありがとう。」と言って
感謝状と書かれた小さなカードを私たちにくれました。
「実はこれ、裏が名刺になっているんだよね。
お店に来ただけで感謝状とかもらったら記憶に残るっしょ。」と言って阿部さんはまた笑います。
高田の中心部にあった店舗を津波で流されてから4年。
「ここまでくるのも決して楽ではなかったし、笑いながらやってきたわけではないよね。
震災当時よりいろんなことは確実によくなっているけど、これからの復興計画とか不安もまだまだ多い。でも、このまちのことを気にして、4年たった今でも日本中からいろんな人が訪れてくれる。
人と人とのつながりが新しい出会いを生んでくれるだよね。この前なんて、カリフォルニアで寿司屋をやっている日本人が、人づてにウチの話を聞いて訪れてくれたんだよ。「絆」って書いたかっこいいTシャツを作ってカリフォルニアで販売して、売り上げを寄付しにきてくれたんだ。すごいうれしくてね。で、そのTシャツ着て記念撮影しようって言われたんだけどそのTシャツがかっこよすぎて、おれに似合わないのね!びっくりしたよ、ほんとに(笑)」
お店の壁には、お客さんが書いてくれた色紙や一緒に撮影したポラロイド写真が隙間なく張られています。食事後、「せっかくなんで一緒に写真撮りましょう」と阿部さん。
「はいチーズ」のかけ声とともにいつのまに用意したのか、色とりどりの紙テープが何本も降ってきてびっくりしたと同時に、久しぶりに子供に戻ったような楽しい気持ちになりました。
「せっかく来てくれたんだから、喜んでもらいたいし、楽しんでもらいたい。
そして、この店のことを、陸前高田のことを思い出して、また来たいと思ってもらいたい。
たまにでもいいから、来てくれる人が一人でも増やしていかないと。
この店も陸前高田も、まだまだここで足踏みしているわけにいかないからね」
「あ。この紙テープ、巻き直して再利用するから。一回だけで捨ててたらもったいないっしょ。」
そう言って、「わはは」と笑う阿部さん。
訪問した方に喜んでもらえるように、今日も、あの手この手と「素敵なサプライズ」を企んでいるに違いありません。


2015年6月23日(火)
阿部 和明さん
<味と人情の 鶴亀鮨>
岩手県陸前高田市竹駒町字滝の里3-1
陸前高田未来商店街内
営業時間:11:30~22:00
定休日:不定休