vol.06 陸前高田 : 出会った人たち
2015 年 10 月 23 日
滝の里工業団地 仮設住宅自治会長 小野田髙志さん
滝の里工業団地につくられた滝の里仮設住宅。
入居している方のほとんどは、もともと今泉地区に住んでいて、家を流されてしまった人たち。
この仮設住宅ができてから4年。小野田さんはそこで3年間自治会長を務めています。
なかなか自治会長を率先してやろうとする人は少ないとのこと。というのも自分の仕事をしながら、自治会長の仕事もするのは思った以上に大変らしいです。
「定年退職してるからさ、時間はあるわけよ。それにおれ、人の世話をするのが好きなんだよね。」
坂の上にある滝の里仮設は、小学生が学校に通うためのスクールバスが坂の下までしか来ない。
「誰に頼まれたわけでもないんだけどね。
『忘れ物はないかい?』とかと話をしながら、子供たちと一緒にスクールバス乗り場までおれも行くんだ。
月曜日は休み明けだから、忘れ物をする子が多くてね。
忘れ物に気づいた子がいたら、おれがその子のランドセルを預かってあげるんだ。
間に合うから走って家さ帰って忘れ物とってこい!って言ってね。
冬は子供たちが行く前に雪かきもするよ。いっつもおれは朝は4:00に起きてるからね。
頑張ると疲れてやりたくなくなるから、休みながらゆっくりね。
おれがそうやってると手伝いに来てくれる人がいるんだよ。それがまたうれしくてね。」
小野田さんは1人で心細そうな人に積極的に話かけ、またイベントがあるときにはみんなが気軽に集まれるように声をかけて歩いているそう。
そうしたはたらきかけもあって住民のみなさんも、外で座って話をしたり連れだって散歩に出たりするようになり、滝の里仮設の昼間は今はにぎやかです。
「被災して死んでしまった人は、お世話をしてあげることもなにもできない。
でも生きてたら、なんかしてあげることはできるじゃない?
自分が辛くならない程度にできることはする。
人を助けることを自分自身が楽しんでいると、相手もなんぼか楽しい気持ちになってくれるしね。
あとを見たらきりがないから、前へ向かうんだ。ここは戻るところがない、ゼロからのスタート。そうやって始めてきたから、人と人とのつながりは震災前よりさらに強くなったと思ってるよ」
見習いたくなるほど強い決意を優しい笑顔のまま、さらりと自然に言葉にする小野田さんは、北海道の私たちにもメッセージをくれました。
「こっちに旅行に来てくれたら嬉しいし、そのときはぜひ被災を味わった私たちの話を聞いてもらいたい。TVや新聞では伝えきれない思いがあるし、それぞれ考えていることも生で伝えていきたいから。震災のことは私たちも忘れないでいたい。忘れないでいてほしいんだ。話をする事で自分たちも少し気落ちが楽になれるしね」
小野田さんの思いと、それに共鳴した人たちの気持ちは距離や時間をこえて、集会所の壁をいっぱいにうめる手紙や写真になっています。
2015年6月23日
<滝の里仮設団地>
陸前高田市竹駒町字滝の里105-5
滝の里工業団地 仮設住宅内